STYLE GUIDE

文体ガイド:比喩・省略・曖昧な動詞の扱い

版: v1.0日付: 2026-08-18 対象: 記事・レポート・仕様書・提案資料

0. このガイドの主旨

3原則はいずれもこの主旨にもとづきます。

このガイドがお願いしているのは、書き手が処理内容を把握していなくても書けてしまう表現を使わないという1点です。

比喩や擬人化、要約めいた抽象語は、中身を確かめないまま文を成立させます。書き手にとっては楽ですが、読み手には何が起きるのかが伝わりません。事実と動作をそのまま置く文は、書く前に内容を確認する必要があるので、理解の浅さがそのまま文面に出ます。この状態を保つためのルールが次の3原則です。

1. 比喩と擬人化を使わない

主語が人ではないものに、人の動作の動詞を当てる書き方を避けます。

主語が人や生き物ではないのに、人の動作を当てている動詞が最も出やすい形です。

使いやすいが避ける表現書き換え何が問題か
手作業をツールに引き取らせる手作業をツールで自動化する擬人的な比喩。見出しは動作をそのまま書く
ここは機械に渡せるここは機械に負担させた方がよい比喩で終わらせず、判断として言い切る
質問が返る質問が返ってくる縮めた言い方は口語寄り。省略しない
直接さわる場面はない直接編集する必要はない口語。書き言葉の動詞にする
PCで動くツールPC上で動作するツール同上
文章にして置いておくだけで文章にして用意しておくだけで同上

渡す・引き取る・任せる・支える・後押しする・寄り添う・紡ぐ・描く・照らす・浮き彫りにする・紐解く、および「〜してくれる」が、避けたい動詞の例です。

判定方法その一文を読んだ人が「で、実際には何をするのですか」と聞き返すかどうかで決めます。読み手に聞き返される文には、動作が書かれていません。

2. 語の一部を削らない

文字数を詰めるときも語形は崩しません。

文字数や尺を詰めるとき、文を削らずに語を削ると、日本語として不自然になります。読み手はその不自然さを敏感に検知します。一般的なテクニカルライティングの語形に戻してください。

削って不自然一般的な書き方何を削ったか
自由が減る自由度が下がる「度」
損得が働く損得勘定が働く「勘定」
思考が落ちる思考力が下がる「力」
決定権を返す決定権を相手に返す目的語(誰に返すか)
逃げ道がなくなる相手の逃げ道がなくなる所有者(誰の逃げ道か)
本人の口から出させる本人の口から言ってもらう使役の形に縮めた
短くしたいとき文字数を詰めるときは文ごと落としてください。語は削りません。説明の担当を図や表に移す方法もあります。短くする対象に主語と目的語を含めません。

3. 中身を書かずに済ませられる動詞を使わない

効果や状態の中身を書かないまま文が成立してしまう3語です。

避ける例書き換え
効くCTRに効くCTRの改善に有効効果的
効くPV回復に直接効くPV回復で最も大きな部分を占める
効く3つの指標に同時に効くCTR・回遊率・CV率を同時に押し下げる
壊れる一斉更新で前提が壊れる一斉更新により、前後の数値を比較できなくなる
設計読者の体験を設計するCTAの位置と文言を決める
設計導線を設計するどのページへ送るかを決める
使ってよい場合実体のある対象に付く本来の用法は問題ありません。薬やブレーキが効く、機械やファイルが壊れる、IA設計書やデータベース設計のような成果物名・技術用語は、そのまま使ってください。
書き換えの注意語だけを差し替えないでください。禁止語を別の語に置き換えるだけでは、同じ問題が別の語形で残り、文章が不自然になります。指摘された箇所については、その文を丸ごと書き直してください。

4. あわせて守ること

3原則と同じ理由から次の4点も守ってください。

  1. 制約には理由を1句添える。「公開ボタンを押すのは人のまま」は、「リスクコントロールのため、公開作業は人が行う」と書きます。
  2. 限定条件は見出しの時点で示す。「テンプレートから外れたページ」は、「テンプレートから外れたページを作成する場合のみ」とします。
  3. 製品名に寄せない。「この形式はAツールが最も得意とする」は、「Aツールなどをはじめとした同種のツールが最も得意とする」に直します。一般名詞を主として使い、製品名は例として添えます。
  4. 文体を統一する。ですます調とである調を1本の文書で混在させません。一文を短くしすぎると、主語や目的語が落ちて読みにくくなります。長短の緩急は文の長さで作ります。

5. 提出前チェックリスト

入稿前に7項目を1回ずつ確認してください。